エフェメラの胎動

おまじない

2022-01-01から1年間の記事一覧

孤児の子守唄は

日常というのは奇跡の連続なのだということを改めて知ることになる 星が綺麗だと君に言えなかった今日の夜に 別れを告げることすら出来ずに 蕩けた夢へ迷い込む 異常なほど暖かくて気持ちが悪くて そういう温度を覚えてしまっていて いつの日か 可哀想になっ…

星が綺麗な夜に泣いたことのない人間を、私は信じることなんてできない なんて思われても良い なんとも思われたくない 何も言わないほうが美しいまま終わることなんて山ほどあるんです でもわかっていてもいつも喋りすぎちゃうね ひとりにいっこずつ命がくっ…

明夜のファンファーレ

夕暮れに見放されて 夜更けに見放されて 夜明けに襲われる 落ちる陽と共に街が無彩色になるなら 桃色の上着をあなたに贈ろう 少しずつ軋んでゆく夢と夢の境界が いつか擦り切れて散らばったら 傷だらけの窓が割れて きっとそこから夜空が見える ぼくのための…

駆引の延長線上にある水平の上に 君が翳した分度器が沈む 眼球がきちんと瞼に仕舞われているかわからなくなって 歯が抜ける夢を観て 立っているのに足が浮くような気がして 上と下と前と後ろが渦を巻いて 確かめる指先だけが鋭利 しなやかな背骨に歯を立てた…

エヴァーエンドラストエイジ

君の残り香がここにあって 思い立った指先が空を切る 瞼の裏に反響する低い音が 静かな地響きに重なっては ミルクみたいに溶けていく 甘い匂いがする夜更けの風 眼鏡の縁に当たる信号の光 が、紅く火照る頬を隠した あと何回、あと何回ならば 僕を許してくれ…

潮彩オルゴール

振り返る 風の行先を追った 翻る爪先にワルツを浮かべて オレンジ色の毒が湧く くすねた花束を持って 小さなあたまが影に揺れた 飛び跳ねる 三つ編みの結いが解く 赤らむ頬を晒して 全てで毒を飲み干した ぴりぴりと弾ける 鼓動が怖くて何故泣くのだ わたし…

あなたから預かったままの夢の 続きが僕には開けない あなたが知っている美しさを 僕は知らないままでいたい 今まで捨ててきた 全てのものが この部屋の真ん中に居て ずっと僕を見ている

今日を終えるために 電車の発車音で夜に向かう 濁り湿った風が 小さな窓から吹き込むので 僕は目を瞑った 昔弾いたことのあるアコーディオンの 蛇腹が動く様を思い出した そういう静かな夕暮れだった

こつりと音がして 抱えていたすべての星が腕からこぼれ落ちた 惑う視線に晒されて 諦めた顔をする君が綺麗だった 覚束なさを噛み砕いて 歯に滲みていく温度だけが 温度だけが、鼓動の証明でした