エフェメラの胎動

おまじない

明夜のファンファーレ

 

夕暮れに見放されて

夜更けに見放されて

夜明けに襲われる

 

落ちる陽と共に街が無彩色になるなら

桃色の上着をあなたに贈ろう

 

少しずつ軋んでゆく夢と夢の境界が

いつか擦り切れて散らばったら

傷だらけの窓が割れて

きっとそこから夜空が見える

 

ぼくのための詩ときみのための譜

星がひとつ手元に降り落ちている

木々の木目が唸り声を上げている

少し冷たい風が海の表面を撫でる

 

五線譜に乗せた音符のように

ひとつひとつを異様な程に丁寧に

 

編み上げた髪が解けるように

散り散りになりゆく意識を掻き集めて

 

幾重に有る正しさの中から

ひとつずつを選んでいた

きみの寝息を守りたいと思った