エフェメラの胎動

おまじない

2020-01-01から1年間の記事一覧

フライデイ・ナイト・フィーバー

街の灯りが燻り 静かな轟音の響く高速道路 雨が降ることさえ心は躍る ひとりになりたい助手席で ひとりとひとりの逃亡劇 否応無く回る世界に この星よりも速く速く 逆らっても叱られぬ夜更け 何処へ向かうか見知らぬ場所へ 向い風すら巻き上げて (街の灯は風…

黙祷するプルメリア・ブルー

無い夢の話をしよう 伸びた髪を潜る指の 描く円がほどけていく 昨日潰れた喫茶店には 沢山の記憶が住んでいたね ちょっとしたことでいいんだ プルメリアの花飾りの 不自然な青色が眩しくて 明日の空を見たいなんて思ったから

étude

教卓まがいのカウンターで 木目の眼をなぞる蟻を殺した朝 ピアノの影から音楽家達の産声が湧き上がる 呪いのように捨てられないポラロイドが カードケースの中で躍る音が聴こえる時 一輪挿しの薔薇は枯れて 孤独者の喉は乾くだろう

閉じた本の栞が飛び出す夜は機嫌が悪い 折り畳まれたハンカチには染みが付いていた 折れた秒針に合わせて息をする 朝靄をゆっくり溶かす 窓の結露を拭くけれど 汚れた瞼がうまく開かないのだ 半紙が濡れて蕩けるように 明日の新郎のネクタイのように コーヒ…

シュガレット

ぼくが一遍の詩を書いても 君は読んではくれない 君はあたまがいいから 詩なんか読まない 瑞々しいつぼみや 雲のかたちや 甘い土のかおりにも 振り向いてはくれない ぼくがうたうとき ぼくだけが ぼくのいのちの承認者である ぼくが今夜ねむるとき 今朝のつ…

雑記

大事にしていた傷跡すらもうあまり見えていないのかもしれない それでも久し振りに眺めた星空には忘却の彼方に飛んで行っていた大切な心みたいなものをまた取り戻した感覚があったりなんかして 唐突に向かった海は生まれて初めて見たような気持ちになったり…