一体どんな御伽話を書き上げたとしても
書いた人物を知る人が読めばそれはもう
万全のフィクションではなくなってしまう
そんな恐ろしいことが赦されている
一体いくつの無駄な段落が葬られてきただろう
僕の言葉は僕の願いではない
僕はいつも嘘の話をしている
純正の与太話、負け損いの書物
腫れ上った指の青い方の糸を
読みかけの栞にするから抜いて欲しい
先が綻びた弱い紐を整える仕草にしか
発現しない祈りがあると思っていた
傷のついた書物の表紙を撫でていて
たまにこちらを見遣る僕がいる
紙に文字を書くと本になるんだ
お前は知らないだろうけど