エフェメラの胎動

おまじない

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

étude

教卓まがいのカウンターで 木目の眼をなぞる蟻を殺した朝 ピアノの影から音楽家達の産声が湧き上がる 呪いのように捨てられないポラロイドが カードケースの中で躍る音が聴こえる時 一輪挿しの薔薇は枯れて 孤独者の喉は乾くだろう

閉じた本の栞が飛び出す夜は機嫌が悪い 折り畳まれたハンカチには染みが付いていた 折れた秒針に合わせて息をする 朝靄をゆっくり溶かす 窓の結露を拭くけれど 汚れた瞼がうまく開かないのだ 半紙が濡れて蕩けるように 明日の新郎のネクタイのように コーヒ…

シュガレット

ぼくが一遍の詩を書いても 君は読んではくれない 君はあたまがいいから 詩なんか読まない 瑞々しいつぼみや 雲のかたちや 甘い土のかおりにも 振り向いてはくれない ぼくがうたうとき ぼくだけが ぼくのいのちの承認者である ぼくが今夜ねむるとき 今朝のつ…

雑記

大事にしていた傷跡すらもうあまり見えていないのかもしれない それでも久し振りに眺めた星空には忘却の彼方に飛んで行っていた大切な心みたいなものをまた取り戻した感覚があったりなんかして 唐突に向かった海は生まれて初めて見たような気持ちになったり…