エフェメラの胎動

おまじない

2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

夜光性

あちら側に消えていった 閑散とした工事現場に残る 人の跡 鳴るつむじ風 祭囃子の音は瓦礫の山から 落ちた瓶詰の誰かの手紙 踊る荒地の砂埃を舐めた夜がある

凄惨とした翌る日の

白い壁 突き出た鉄骨 こんな風の強い夜に 雨も降ってないのに君は傘を差して 揺れる遠くの声に耳を澄ます 迫って来る咆哮を 悲しそうな目で見つめて 煽られた無地の傘は寂しく飛んだ 君はそこに立ってた

送別会

叫んで 呟いて 流して 握りつぶして 首が締まる 瞳孔が開く 動向 オーバーフロー 石鹸の泡 猫みたいな目玉に流し込んで チューリップの花弁の色褪せを君が撫でるから 夜が明けるのを思い出して 黄色いチューリップを漂白した

おとぎばなし

明日地球が終わるとする ぼくはきみのとこに バニラアイスをふたつ買って お釣りはいいですとかっこうをつけて ばかみたいに寒いなかを自転車で向かう ぜんぶが消える瞬間を 手をつないで わりとたのしかったねとアイスを食べながら 笑いあって そうして神様…

オープニングアクト

夜がこっそり幕を開けた 僕は舞台裏からそれを見てる 見てる 僕は僕の舞台の上でも主役になれない だれも居ないステージで 星だけが照明 証明 夜が終わるまで、赤幕の裏で

クラッカー

なんだかぼくらは これをしってる みっつじゃなんだか多すぎて ふたつじゃなんだかさみしくて ひとつじゃ必要にならなくて だからそのままぽつんとしてる 鳴らすとおおきい音がする 引き出しの中でひとりぼっち 使われなかったクラッカー

特急券

偶数と奇数のあいだのろまんすを 疾るあなたがいそがしくゆく うたよみんより

エコー

ひそひそ ひそひそ みみもとでさわがないで おしえて おしえて 苺がなんで赤いのか 爪がどうして白いのか 鯨はどうして青いのか 水飛沫、泡沫 石鹸の泡の胎盤

おやつのじかん

腐った肉が落ちていて なんだかこちらを見ているけもの 黄色い眼球を突き抜けた針状のもの しらない歯が欠けていた 分裂する双方向 昼間のけもの のたうつ毛玉

風呂場に窓は必要かという研究結果

浴槽に顔を沈めている 窓の桟がとても汚れている 飲んでもよいもの 入浴剤 シャンプー 化粧落とし 固形石鹸の 削られた溝に 胞子を飛ばそう 天井にシャワーを当てて 冷えた水滴を浴びる 花が咲いた こちらを見ている 窓の外は 真っ赤な壁で じいっとしている…

プレビュー

死んでいる なんかがあそこで死んでいる 息を絶えている 遺棄を 放ったのはだあれだ マスクが白い 白い 白い息を吐いた 排他 だれも来ないで だんだんねむいね ねむいね