エフェメラの胎動

おまじない

2023-01-01から1年間の記事一覧

晩夏回想

夏空に向けて蝉の羽掲げれば 透き通る雲に窓辺が視える 鉄板の如き地面に垂れ落ちる 自意識割れて火花が落ちて 束の間の涼しげ 余った素麺の破片が出てくる彼岸のキッチン 進め夏、破滅を瞼に貼り付けて 犬死を待つような寝姿 白波を泳ぐ鴎の群衆よ 戻りゆく…

心音を拍数にしてBPM125の死亡宣告

...(心拍)

夕暮れを眺めているとき会いたい人 僕の分しかケーキを買ってこない君 都会、余白のない都会 狭い空に慣れていく 血の流れの中を虫が這いずるように 加虐性のある約束を反芻している 言葉にすると稚拙な事柄はすべて きっと正しく鎧を纏っているのだろう 真…

僕のこと忘れて欲しい病葉よ春雷を待つ新芽のために

悲しいと言えば簡単で聞こえの良いこの感情は、 決してその一言では済まない代物だ 脇道に寄せられた汚い雪が腐っていく 耳を澄ますと、その断末魔が静かに響き渡る 僕というものは四六時中冬を考えている 生クリームが乗せられたココアの 白と焦茶の境目が…

tumbling,ing

足の底から冷えていく 虫の死に際の羽音が 火花のように季節を終わらせる 朝と夜に凭れ続けて 真昼を知らなくなっていく 氷の入った水を飲み干していくとき 透き通った管が身体を巡ることを知る 小さな氷塊が溶け出していて 朝焼けの湖の水面の煌めきを まる…

ハインリヒ・ハイネ・クライネ

日々が過ぎゆくことを風と称して 時が過ぎゆくことを川と称した 痛みを抱えて日々は輝くと宣った 艶とした綺麗な肌に傷がない 愚か者よ、愚か者が 幼子の歩く音 微睡を啄む鳥の声 全てに堪えかねている 手入れされない庭の重さ 全てに堪えかねていて 愚か者…

シーラカンス午後0時

死んだ虫が美しいのは 形だけがそこにあるから 蠢く手脚にはいやというほど命がある 春一番に晒された君の髪が 卑しく解けて宙を舞う つるりとした心臓 蛹のまま、溶けて消えてを繰り返して そこにいた筈のちいさなほとぼりが ゆっくり消えてしまうまでを ぼ…

2023年晩春

殺し屋のような目付きで歌うその瞼に ひとつ、星を乗っける じゃんけんをしよう私が負けるまで 負けたら全部君にあげるよ 今はもう昔の話 特別な生命を刺して殺した夜明け 石ころを蹴飛ばす笑顔の温さにも 厭な気配がある通学路 大好きなあなたに会いに行き…

短歌劣箋

2016/01/10 03:58 悲しいと泣く君のとなりで今日もかわいいだけのパンダの笑顔2016/01/10 04:04 バイバイとさよなら 渡した封筒ときみとの糸を 解く電車と 2016/01/24 03:54 新しく買った手帳に書きかけた記念日 あの日の私を褒める 2016/01/24 04:20 夜更か…