死んだ虫が美しいのは
形だけがそこにあるから
蠢く手脚にはいやというほど命がある
春一番に晒された君の髪が
卑しく解けて宙を舞う
つるりとした心臓
蛹のまま、溶けて消えてを繰り返して
そこにいた筈のちいさなほとぼりが
ゆっくり消えてしまうまでを
ぼんやりと眺めることしかできなかった
泣いている小さなわたしに
まだ泣いてるよと伝えたい
名を知らない鳥が鳴く昼過ぎの寝床
固まった骨を砕いてばら撒いてみて
秘密がある私を好きにならないでね
首の後ろに感じる君の悪意の香りも
厭な予感がする程愛せてしまうから