エフェメラの胎動

おまじない

シーラカンス午後0時

 

 

死んだ虫が美しいのは

形だけがそこにあるから

蠢く手脚にはいやというほど命がある

春一番に晒された君の髪が

卑しく解けて宙を舞う

 

つるりとした心臓

 

蛹のまま、溶けて消えてを繰り返して

そこにいた筈のちいさなほとぼりが

ゆっくり消えてしまうまでを

ぼんやりと眺めることしかできなかった

 

泣いている小さなわたしに

まだ泣いてるよと伝えたい

 

名を知らない鳥が鳴く昼過ぎの寝床

固まった骨を砕いてばら撒いてみて

秘密がある私を好きにならないでね

首の後ろに感じる君の悪意の香りも

厭な予感がする程愛せてしまうから