夕暮れを眺めているとき会いたい人
僕の分しかケーキを買ってこない君
都会、余白のない都会
狭い空に慣れていく
血の流れの中を虫が這いずるように
加虐性のある約束を反芻している
言葉にすると稚拙な事柄はすべて
きっと正しく鎧を纏っているのだろう
真実はいつもお前だけに見えない字で
書かれていて、日暮がその手紙を燃す
知らない苗字をなぞったりしていた
ここに書きたかったいちばん大切なこと
忘れても、澱は溜まる
日々は罅となり僕の手に層をつくる
薄く、少しずつ
愛せないことを罪にしないでほしい
僕はいつも過去形で喋っていて
記憶の隅の音楽室から白鍵の音がする
どんな宝石よりも美しかった石ころ
鍵の壊れた宝箱に詰めた瓦落多
壊れかけの街灯が歌うように瞬いて
代わりにひとつ雨粒が頬に落ちてくる
美しく終わる物語のために
終わらないといけないもの
一歩進んで、二歩下がって
僕が触るもの全てが
赤い砂に崩れ落ちる夢を見ていた
君が今までに吐いた息は
どのくらいこの星を象っているのだろう