エフェメラの胎動

おまじない

 

 

閉じた本の栞が飛び出す夜は機嫌が悪い

 

折り畳まれたハンカチには染みが付いていた

 

折れた秒針に合わせて息をする

 

 

 

朝靄をゆっくり溶かす

窓の結露を拭くけれど

汚れた瞼がうまく開かないのだ

 

 

半紙が濡れて蕩けるように

明日の新郎のネクタイのように

コーヒーに注いだミルクのように

キャンディボトルの蓋のように

重たい鐘が吠えるように

 

 

 

限りないただしさを

遠くから掻き集めて

子のように抱いた腹