エフェメラの胎動

おまじない

 

 

 

落とした愛を拾いに行って、

滑り落ちた君の影を踏みつけた

この椅子がどう壊れようと、

僕には心底関係の無いことで

熟れた桃の実が汁を垂らすほど、

長い時間を掛けて

長い時間を掛けても、

この花壇に芽は産まれない

ぼろぼろになった本の端の、

埃の匂いに酔っていた

滑り落ちゆく影がどう消えても、

此処には誰も残らない