エフェメラの胎動

おまじない

ハーモニカって、意外と使わないです

 

と。まあそんなこんなで来たわけです 海に

 

ええなんだか夜も早いのでまったくそんな感じではないのですけど

 

漣ってこれでしょうか ちがう?

じゃああれでしょうか ちがう?

なんだかむつかしいのですね

 

砂浜は黄色いのですね

あ、貝殻が踵に刺さりますね 変な虫もいますね

 

潮風ってこれなんですね これは正解な気がします

潮風はしょっぱいようなあまいようなそんな感じです しおかぜ

甘いのはあなたでしょうか 

 

それもまた正解な気がします

 

陽は正しく落ちていくのですね

 

いつかの六時半もきっと美しかったのです

 

 

凄惨とした翌る日の

白い壁 突き出た鉄骨

こんな風の強い夜に

雨も降ってないのに君は傘を差して

揺れる遠くの声に耳を澄ます

迫って来る咆哮を 悲しそうな目で見つめて

煽られた無地の傘は寂しく飛んだ

君はそこに立ってた

送別会

叫んで 呟いて 流して 握りつぶして

首が締まる 瞳孔が開く 動向

オーバーフロー 石鹸の泡 猫みたいな目玉に流し込んで

チューリップの花弁の色褪せを君が撫でるから

夜が明けるのを思い出して 黄色いチューリップを漂白した

おとぎばなし

明日地球が終わるとする

ぼくはきみのとこに

バニラアイスをふたつ買って

お釣りはいいですとかっこうをつけて

ばかみたいに寒いなかを自転車で向かう

ぜんぶが消える瞬間を

手をつないで

わりとたのしかったねとアイスを食べながら

笑いあって

そうして神様が目を覚ますときに

ぼくたちはねむりたい