エフェメラの胎動

おまじない

エロいね

メロンクリームソーダをよく注文するんだ やっすいさくらんぼの浮いたメロンクリームソーダ みどりいろ みどりいろはなんのいろ 乱暴な色をしている 生きることと死ぬことの どちらがどっちの色 紙ナフキンに落ちたミルクの泡が まるで みたいに 白くて なん…

パン

美しく書き始めたの新しいノート 古ぼけた下敷き使って でも 先生はまったくチョーク触らないし うしろのだれかの寝息うるさい チャイムでリセット今日の講義 おなかすいたのトンネルくぐって

目眩

近くて見えないもの 眼鏡の縁の青色 冷えた鼻先 眉毛の上のにきび そんなもの そんなような 近くて近くて見えないもの

pull

なんていうんだろうな 朝からジュースの缶、おとして なんかあの指、引っ掛けてぷしゅってするとこ あそこが取れちゃってさ 飲めないでやんの そんでなにがあれってさ なんか面白くなっちゃって 真顔で笑って まだ冷蔵庫に入れてある どうしたらいいかわかん…

彷徨い名の先

いつかひとりの猫と暮らすことになったらけむりと名付けようと思っていた しかし‪猫はきっと 自らの名を決めているのだろうと思うと それを教えてほしくてわたしは泣くことしかできない 猫はわたしをなんと名付けているのだろう‬ 呼んでくれよ 呼んで

かおりさん

チクタク時計 郵便番号 ポストにストンと届いた君の 細いひらがな いつもの匂いの 便箋燃やして 立ちゆく煙

一点

つめきり カッターの刃の1mm はさみの二枚 交差する1mm コンタクトレンズの透明 ふやけるほど 境目のない 1mm

kitchen

コンロではなく電子レンジである 換気扇 あるいは鍵のない窓である 賞味期限 ピンク色の羊水 キッチン ママ 台所 台所はママである あるいは

筆算で解けるもののみ

千冊の詩集と寝てみたこと 4本の鉛筆が あるいは黒が 紙の上にストンと乗っていること 連絡先を書いた手帳が失くなる 猫の尻尾を踏んだような あるいは猫を 煙の舞う真上の天井にある 丸い白が機能していないこと 掛算は苦手だった

なまにく

焦ることも騒めくことも手を振ることも要は勝てないんだろう表紙を平にして晒された本のようなあの人のことはどう掻きむしっても僕には届かない 届かないなんてありふれた言葉で測るあの人と僕のセンチメートル センチメンタル なんちゃって 僕が言ってやり…

さわやか三組

さわやか三組 いつもにこにこ にこにこ三組 げんきにおはよう おはよう三組 マイちゃん死んで さわやか三組 中庭に告ぐ

ネオソフト

冷蔵庫にあたまをつっこみます 箱と容器とチューブの匂い 卵の殻の匂いもします あったかいです あったかいです よっぽど 空になった紙パックの壁が聳え立っています 開け放しのあの音がまるで明日のようでした

ハーモニカって、意外と使わないです

と。まあそんなこんなで来たわけです 海に ええなんだか夜も早いのでまったくそんな感じではないのですけど 漣ってこれでしょうか ちがう? じゃああれでしょうか ちがう? なんだかむつかしいのですね 砂浜は黄色いのですね あ、貝殻が踵に刺さりますね 変…

にやにや にゃんこ

どきどき せいぎ うきうき うわき るんるん るーじゅ わくわく わるいこ

リストアップ

いいにおいのすること やさしいフルーツ せっけん フランボワーズ しゃぼん ミルク フラワーブーケ おひさま 雨上がりのアスファルト ブールドネージュ ネイルカラー 洗面台で 鳴く猫

夜光性

あちら側に消えていった 閑散とした工事現場に残る 人の跡 鳴るつむじ風 祭囃子の音は瓦礫の山から 落ちた瓶詰の誰かの手紙 踊る荒地の砂埃を舐めた夜がある

凄惨とした翌る日の

白い壁 突き出た鉄骨 こんな風の強い夜に 雨も降ってないのに君は傘を差して 揺れる遠くの声に耳を澄ます 迫って来る咆哮を 悲しそうな目で見つめて 煽られた無地の傘は寂しく飛んだ 君はそこに立ってた

送別会

叫んで 呟いて 流して 握りつぶして 首が締まる 瞳孔が開く 動向 オーバーフロー 石鹸の泡 猫みたいな目玉に流し込んで チューリップの花弁の色褪せを君が撫でるから 夜が明けるのを思い出して 黄色いチューリップを漂白した

おとぎばなし

明日地球が終わるとする ぼくはきみのとこに バニラアイスをふたつ買って お釣りはいいですとかっこうをつけて ばかみたいに寒いなかを自転車で向かう ぜんぶが消える瞬間を 手をつないで わりとたのしかったねとアイスを食べながら 笑いあって そうして神様…

オープニングアクト

夜がこっそり幕を開けた 僕は舞台裏からそれを見てる 見てる 僕は僕の舞台の上でも主役になれない だれも居ないステージで 星だけが照明 証明 夜が終わるまで、赤幕の裏で

クラッカー

なんだかぼくらは これをしってる みっつじゃなんだか多すぎて ふたつじゃなんだかさみしくて ひとつじゃ必要にならなくて だからそのままぽつんとしてる 鳴らすとおおきい音がする 引き出しの中でひとりぼっち 使われなかったクラッカー

特急券

偶数と奇数のあいだのろまんすを 疾るあなたがいそがしくゆく うたよみんより

エコー

ひそひそ ひそひそ みみもとでさわがないで おしえて おしえて 苺がなんで赤いのか 爪がどうして白いのか 鯨はどうして青いのか 水飛沫、泡沫 石鹸の泡の胎盤

おやつのじかん

腐った肉が落ちていて なんだかこちらを見ているけもの 黄色い眼球を突き抜けた針状のもの しらない歯が欠けていた 分裂する双方向 昼間のけもの のたうつ毛玉

風呂場に窓は必要かという研究結果

浴槽に顔を沈めている 窓の桟がとても汚れている 飲んでもよいもの 入浴剤 シャンプー 化粧落とし 固形石鹸の 削られた溝に 胞子を飛ばそう 天井にシャワーを当てて 冷えた水滴を浴びる 花が咲いた こちらを見ている 窓の外は 真っ赤な壁で じいっとしている…

プレビュー

死んでいる なんかがあそこで死んでいる 息を絶えている 遺棄を 放ったのはだあれだ マスクが白い 白い 白い息を吐いた 排他 だれも来ないで だんだんねむいね ねむいね

餞別

君に唄を書いた 誰も知らない 誰も知らない唄を きっとみんな知らない 机の上に書き置いた一枚の便箋に 一行の詩と 三行の懺悔と たった四文字のまぎれもない言葉を 君のために残したことを 忘れて仕舞えばいい そのまま忘れて仕舞えばいい 君も知らない き…

キラキラ

好きな人が好きだった人はきらい 好きな人が嫌いな人も多分きらいで 好きな人が好きな人ももしかしたら、きらい

等式

宇宙についてかんがえながら 目覚ましを止めている 宇宙についてかんがえながら 顔を洗っている 宇宙についてかんがえながら カップラーメンを食べている 宇宙についてかんがえながら 時計を見ている 宇宙についてかんがえながら 食器を洗っている 宇宙につ…

かなしくなっちゃいけないから 目を見開く 乾いた眼球になんだか悪そうな雨粒が ダイブする 曇ったレンズ越しの 飛行機の音 飲み込んだホチキスの針は 魚の骨と変わりない 刺さる蛍光灯が痛い 痛い