エフェメラの胎動

おまじない

2017-01-01から1年間の記事一覧

忘却を思い出すことの意味が君にあることを握りしめている

薄暗く光る部屋の 布団の隅にチラリと見える 爪の先のあの反射する一ミリ ペット禁止 猫の声 ああ猫がないてる 旧友 いかがおすごしか 僕はもう 君の顔が思い出せない

予定

食事を済ませた 家から歩いて17分の ギフトショップに行った ひとつ蝋燭と メッセージカードを買った 机の上に広げて ペンを持ってみる 驚くほどなにも書くことがない わかっていた それをわかってはいた僕はわかっていましたよというつもりのシーリングをカ…

揺り籠

透明の中に青が入り込むように 睫毛の隙間に冷えた雨のにおいがうつるように 曇硝子に爪で書いた 意味のないおまじないと 汗ばむ首をかんがえて 知らないを埋める駅の雑踏に 揺り籠

色彩環

‪白と黒が いちばんの鮮やかです‬

タイトル未定

‪たまに、極々たまに、この人はいつかの昔にわたくしと同じ個体、あるいは同じ個体の一部、別々の部分でもよいのですが、そういった「同じ」を共有していたものではないのかなと そう思うときがあります そういうときは この人の目ん玉、耳、手の先人差し指…

ねえそうね

ねえ、きみにわたくしの頭ん中がわかりますか わかっていただけるのですか どうやらわたくしには到底扱えない代物なようでして、もう十数年間の付き合いですが、一度たりともなんというかこう隣を歩けたことがないような気がしまして わたくしにも何がなんだ…

ホコリ

いっつもなにかしら引っ張ってきてはやれ悲しいさあさびしいって言って本棚の背表紙に頬を引っ付けてああ冷たいなんて言ってねえ、部屋の銀色を探して探して触れてああ冷たいなんて言って、ねえ それでも窓は開かないんよ ねえ

二枚重ねの一枚

ありがちな煙草に好きな人を重ねた詩歌 簡単にセンチメンタルになりたくて つい夜中にベランダ コーラで酔える単純な身体で 蒸すだけだった煙草が吸えるようになった 夜は広いよ 夜も簡単な感性だね 紙みたいだよ あたし

エロいね

メロンクリームソーダをよく注文するんだ やっすいさくらんぼの浮いたメロンクリームソーダ みどりいろ みどりいろはなんのいろ 乱暴な色をしている 生きることと死ぬことの どちらがどっちの色 紙ナフキンに落ちたミルクの泡が まるで みたいに 白くて なん…

パン

美しく書き始めたの新しいノート 古ぼけた下敷き使って でも 先生はまったくチョーク触らないし うしろのだれかの寝息うるさい チャイムでリセット今日の講義 おなかすいたのトンネルくぐって

目眩

近くて見えないもの 眼鏡の縁の青色 冷えた鼻先 眉毛の上のにきび そんなもの そんなような 近くて近くて見えないもの

pull

なんていうんだろうな 朝からジュースの缶、おとして なんかあの指、引っ掛けてぷしゅってするとこ あそこが取れちゃってさ 飲めないでやんの そんでなにがあれってさ なんか面白くなっちゃって 真顔で笑って まだ冷蔵庫に入れてある どうしたらいいかわかん…

彷徨い名の先

いつかひとりの猫と暮らすことになったらけむりと名付けようと思っていた しかし‪猫はきっと 自らの名を決めているのだろうと思うと それを教えてほしくてわたしは泣くことしかできない 猫はわたしをなんと名付けているのだろう‬ 呼んでくれよ 呼んで

かおりさん

チクタク時計 郵便番号 ポストにストンと届いた君の 細いひらがな いつもの匂いの 便箋燃やして 立ちゆく煙

一点

つめきり カッターの刃の1mm はさみの二枚 交差する1mm コンタクトレンズの透明 ふやけるほど 境目のない 1mm

kitchen

コンロではなく電子レンジである 換気扇 あるいは鍵のない窓である 賞味期限 ピンク色の羊水 キッチン ママ 台所 台所はママである あるいは

筆算で解けるもののみ

千冊の詩集と寝てみたこと 4本の鉛筆が あるいは黒が 紙の上にストンと乗っていること 連絡先を書いた手帳が失くなる 猫の尻尾を踏んだような あるいは猫を 煙の舞う真上の天井にある 丸い白が機能していないこと 掛算は苦手だった

なまにく

焦ることも騒めくことも手を振ることも要は勝てないんだろう表紙を平にして晒された本のようなあの人のことはどう掻きむしっても僕には届かない 届かないなんてありふれた言葉で測るあの人と僕のセンチメートル センチメンタル なんちゃって 僕が言ってやり…

さわやか三組

さわやか三組 いつもにこにこ にこにこ三組 げんきにおはよう おはよう三組 マイちゃん死んで さわやか三組 中庭に告ぐ

ネオソフト

冷蔵庫にあたまをつっこみます 箱と容器とチューブの匂い 卵の殻の匂いもします あったかいです あったかいです よっぽど 空になった紙パックの壁が聳え立っています 開け放しのあの音がまるで明日のようでした

ハーモニカって、意外と使わないです

と。まあそんなこんなで来たわけです 海に ええなんだか夜も早いのでまったくそんな感じではないのですけど 漣ってこれでしょうか ちがう? じゃああれでしょうか ちがう? なんだかむつかしいのですね 砂浜は黄色いのですね あ、貝殻が踵に刺さりますね 変…

にやにや にゃんこ

どきどき せいぎ うきうき うわき るんるん るーじゅ わくわく わるいこ

リストアップ

いいにおいのすること やさしいフルーツ せっけん フランボワーズ しゃぼん ミルク フラワーブーケ おひさま 雨上がりのアスファルト ブールドネージュ ネイルカラー 洗面台で 鳴く猫

夜光性

あちら側に消えていった 閑散とした工事現場に残る 人の跡 鳴るつむじ風 祭囃子の音は瓦礫の山から 落ちた瓶詰の誰かの手紙 踊る荒地の砂埃を舐めた夜がある

凄惨とした翌る日の

白い壁 突き出た鉄骨 こんな風の強い夜に 雨も降ってないのに君は傘を差して 揺れる遠くの声に耳を澄ます 迫って来る咆哮を 悲しそうな目で見つめて 煽られた無地の傘は寂しく飛んだ 君はそこに立ってた

送別会

叫んで 呟いて 流して 握りつぶして 首が締まる 瞳孔が開く 動向 オーバーフロー 石鹸の泡 猫みたいな目玉に流し込んで チューリップの花弁の色褪せを君が撫でるから 夜が明けるのを思い出して 黄色いチューリップを漂白した

おとぎばなし

明日地球が終わるとする ぼくはきみのとこに バニラアイスをふたつ買って お釣りはいいですとかっこうをつけて ばかみたいに寒いなかを自転車で向かう ぜんぶが消える瞬間を 手をつないで わりとたのしかったねとアイスを食べながら 笑いあって そうして神様…

オープニングアクト

夜がこっそり幕を開けた 僕は舞台裏からそれを見てる 見てる 僕は僕の舞台の上でも主役になれない だれも居ないステージで 星だけが照明 証明 夜が終わるまで、赤幕の裏で

クラッカー

なんだかぼくらは これをしってる みっつじゃなんだか多すぎて ふたつじゃなんだかさみしくて ひとつじゃ必要にならなくて だからそのままぽつんとしてる 鳴らすとおおきい音がする 引き出しの中でひとりぼっち 使われなかったクラッカー

特急券

偶数と奇数のあいだのろまんすを 疾るあなたがいそがしくゆく うたよみんより