エフェメラの胎動

おまじない

Champs-Élysées

 

 

 

透き通るような白い肌を薄く桃色にして雨が強く降るのを待っていた

傘が蝙蝠のように翻る駅前で

じぃとあなたに沿うように

赤いポストは雫に濡れていた

 

するりとした石の通り

滑る靴が緊張させた

 

静かに拡がる水の溜まり

優しく叩きつける飛沫

黒いタクシーが扉を開く音

 

遠くの景色へと目を瞑る

睫毛にかかる淡い反射光

細まった視界の隙間から

それを眺めるのが好きだった

 

街が煌く夜に

人混みに消えた

あの鮮やかなレインコートは

そのままでいてほしかった

軽い足取りで

人魚のように

するりと群衆を掻き分けて

全てを知っているかのように

まるで全てが手中のように

溌剌とした長靴の爪先に

魔法がかかっているかのように