「こうしている間に、幾万もの時間が流れて いくつも死んでいくつも生まれているらしいから なんかしておいたほうがいいかな」
彼女はこういうことを言いはじめるときまって冷蔵庫を開けてみたり靴箱の靴を出しては入れてみたり ラジカセに詰まった埃なんかをつついてみたりする
「地球が回っているというより なんかもっと違うものが回ってるんだと思うんだよね」
腹が減った 戸棚のパスタを茹ではじめる 塩がない
「海のためのバケツのフチがここで、わたしたちがフチコさん」
海から取った塩はパスタに使えるのだろうか
「隣の花屋さん チューリップがないの 球根はあるのに」
塩がない
「爪の青い子を見たの 空と海どっちからきたと思う?わたしはね 駅前の喫茶店のガラスがいいとおもう」
買い貯めのが戸棚にあるはず
「UFO UFOって言うけど、うちゅうの人が見たらきっとクルマもヒコウキも UFOだよね」
俺たちがうちゅうじんか
「悪くないって顔してる」
悪くない