ちび電球を煮詰めると
ことこととおとがする
ちび電球を煮詰めると
ことこととおとがする
眠る時の呼吸
彩を纏う鼓動
布を揺らす
鏡を打つ
冷えた鼻先
口先の余熱
意味を包む
甘い爪
張った線
地をなぞろう
灰を浮かべよう
暖まっていく電器
ぬるくなる 涎
衣を剥ぐ
呼吸に委ね
戸を披く
教授の講義 3回同じ話
トーストにバターを塗るときみたいに
しゅわしゅわ溶けてしまいたい
公園のベンチはススキ色
ぼろぼろのおじさんが座ってる いつも
紙飛行機の折り方を忘れた
いつも、ぐにゃんと変な円を描いて
一番最初に墜落した
折り方を忘れた
いつまでたっても
思い出せない
甘い匂いの背を追い
ライターで溶かした袖を食む
誰も少し宙を見ている
駅員 助長する常套句
広告しか入っていない郵便受に迎えられながら帰宅した
ただいまという声に震えた空気が死にかけの蝶みたいに揺れて過ぎる
電気のスイッチを付けたような気がした
ぼう、と小さく唸る冷蔵庫
じい、と鳴り続ける
何が
外壁
まな板の傷痕
蠅の卵
口寂しくて爪を舐める
Happy Birth Day
彼女は泣いておりました
母が悲しいお話をするので
いくつも夢をみましたが
幾千の星には届きませんでした
彼女は泣いておりました
雨にふやけてしまった本を暖炉に翳しながら
猫は振り向かず歩きます
ひとりで居たいのです
彼女は泣いておりました
ラブレターを書きました
何処か遠く美しい場所
知らない誰かを愛するために
彼女は星になりました
月にいる彼の愛しい花を
一目見るために