エフェメラの胎動

おまじない

ゲロ

 

 

 

教授の講義 3回同じ話

 


トーストにバターを塗るときみたいに

しゅわしゅわ溶けてしまいたい

 


公園のベンチはススキ色

ぼろぼろのおじさんが座ってる いつも

 

 

 

紙飛行機の折り方を忘れた

 


いつも、ぐにゃんと変な円を描いて

一番最初に墜落した

 

 

 

折り方を忘れた

 

 

 

いつまでたっても

思い出せない

 

 

 

 

feat.譫妄

 

 

広告しか入っていない郵便受に迎えられながら帰宅した

 

ただいまという声に震えた空気が死にかけの蝶みたいに揺れて過ぎる

 

電気のスイッチを付けたような気がした

 

ぼう、と小さく唸る冷蔵庫

 

じい、と鳴り続ける

何が

 

 

外壁

 

まな板の傷痕

 

蠅の卵

 

口寂しくて爪を舐める

 

 

Happy Birth Day 

 

 

 

 

 

ウルメール・ミュンスターの花瓶より

 

 

 

彼女は泣いておりました

 

母が悲しいお話をするので

 

いくつも夢をみましたが

 

幾千の星には届きませんでした

 

 

 

彼女は泣いておりました

 

雨にふやけてしまった本を暖炉に翳しながら

 

猫は振り向かず歩きます

 

ひとりで居たいのです

 

 

 

彼女は泣いておりました

 

ラブレターを書きました

 

何処か遠く美しい場所

 

知らない誰かを愛するために

 

 

 

彼女は星になりました

 

月にいる彼の愛しい花を

 

一目見るために

 

 

shiawase

 

 

揺れる蛸

 

 

歓迎されなかった固有名詞は

どこへ向かう

 

1.7メートル毎秒のぬるい風

 

隠れ場所の外階段は濡れて

待ち惚けの僕

 

引っかかって抜けた白い髪を

食んで

もどってゆく細胞

 

 

あと15分

 

冴えてしまった深夜の意識を抱えている

 

 

o beata solitudo , o sola beatitudo

 

 

戻らないと 伝えておいてほしい