エフェメラの胎動

おまじない

また、夏が来るよ

 

 

 

どうでもよかったはずの夕暮れ

笑って手を振る

何故、と言えなかった 

焼け落ちた空には海が近い

忘れるはずだった 忘れたかった

遥か彼方まで遠く続く白い雲に

もう覚えていない記憶を呼び起こして

写真には残っていない

青い制服のベルトを折り上げている

忘れたかった 忘れていなかった

安いアイス 

溶ける体温

 

どうでもよかった夕暮れ

青と橙だけがずっと 

瞼に焼き付いている

 

 

 

 

水族館の帰り道

 

 

ダイビング

部屋のランプを青色にして

鮫の縫い包みを枕に

破けた布団の羽毛を吸い込んで

溺没

 

水の音が段々血の音に聞えてくる

絶え間ない煽情

 

何処にいるかわからなくなってくるから

肌に爪を立てていた

違うことにした

見ないことにした

 

派手な電飾の繁華街

エンゼルフィッシュの真似をして

群衆の間を

(海藻)

 

何処にも行きたくないな

(回送)

 

 

 

sorrysosorry

 

 

 

今日は久しぶりに月が見えたよ

そういえば、いま月が見える時間、外にいないことが多いな

自分で忙しくするのは癖だけど、

何かに忙しくされるのは嫌だな

 

部屋がまた、汚くなった

ゆっくり片付ける時間がないな

時間がないな 私もみんなも

 

せかせかしてると老けちゃうよ

私まだ子供でいたい

ゆっくりでいいよ

そんなのまだ知らないよ

 

アイスも氷も溶けちゃうよ

折角淹れた紅茶も冷めちゃうよ

私まだここにいたい

 

 

だめかなあ 時計がカチカチするから

たまらなくなって 壊しちゃったよ

見えなくていいよ

聞こえなくていいよ

だってまだなんにも知らないよ

 

言わなくていいよ

言わなくていいから

ミルクのアイスを買いに行こうよ

 

 

 

♡Aだけのトランプ箱

 

 

 

 

赤い彼女は、マークジェイコブスの鞄を被っている


透明な約束 


小さな冷蔵庫に、白桃のゼリーだけが入っていた


溜まっていく無料のスプーン

指輪入れのワイングラス

 


リボンを折りたたむ時だけ 

レースを結ぶときだけ

 

 

少女になれた 

割れた香水瓶を 灰皿にして