エフェメラの胎動

おまじない

答え

 

 

「例えば ものを落とす 下に落ちる ただ果たして それが落下しているのか 地面が上昇しているのか 例えば 僕が歩く 道が進む ただ果たして 僕が歩んでいるのか 道が後退しているのか 僕は学がないからわからない でも それでもペンは机から落ちるし 僕は後ろには歩いていけないのです」

UFO

 

 

「こうしている間に、幾万もの時間が流れて いくつも死んでいくつも生まれているらしいから なんかしておいたほうがいいかな」

 彼女はこういうことを言いはじめるときまって冷蔵庫を開けてみたり靴箱の靴を出しては入れてみたり ラジカセに詰まった埃なんかをつついてみたりする

「地球が回っているというより なんかもっと違うものが回ってるんだと思うんだよね」

腹が減った 戸棚のパスタを茹ではじめる 塩がない

「海のためのバケツのフチがここで、わたしたちがフチコさん」

海から取った塩はパスタに使えるのだろうか

「隣の花屋さん チューリップがないの 球根はあるのに」

塩がない

「爪の青い子を見たの 空と海どっちからきたと思う?わたしはね 駅前の喫茶店のガラスがいいとおもう」

買い貯めのが戸棚にあるはず

「UFO UFOって言うけど、うちゅうの人が見たらきっとクルマもヒコウキも UFOだよね」

俺たちがうちゅうじんか 

「悪くないって顔してる」

悪くない

 

 

 

 

残りの0%は枕の下に

 

 

 

ブルーベリー ブルーベリー

 

手の先に 爪の隙間に

 

こびりついた 紫色

 

永遠に 100%のしあわせが

 

こないのは

 

わたしのせい かみさまのせい

 

ぬるくなったヨーグルトを

 

口の端につけたまま ああなんて

 

絶えたものだろう

 

 

 

落とす化粧の雪の様

 

 


金木犀の匂いがした
いつ降ったのかわからない水溜りに掬われた脚が
乾いた喉が 目が
軋んでいる
ノート、いつから付けてないっけ
ノート!ノートだ そこに私がいるはずだ
風に捲られた白いページが眩しいほど
ああ スカートのよう


金木犀の匂いがした

 

 

税込1300円

 

 

 

午後6時を灰混じりの紺が飲む
しゃんとするのが疲れて バスの一番前にきたないわたしを晒している
空をみている 覚えていない夜の境目

 

唇の端にたまった赤 昨日買ったリップは似合わないから捨てたよ

 

ベビーカーに乗りたい
赤ちゃんのままのわたしがどこかにいる

 

つらいことがしたくなくて生きてる
このバスどこに向かってるんだろう