エフェメラの胎動

おまじない

無題

 

 

 

一軒の空き家 詰め替えのシャンプー

汗をかくコンクリート 叩く足音

 

明日は多分晴れるから よく眠っていい

7月の熱が 目の黒いとこに移り込むから

 

「もう忘れたよ」

 

だからさあ、爪を塗ろう 何かを埋めるよう

気づかなくていい それは美しい

だからさあ、水を替えよう 明日は晴れだ

 

 

 

忘却を思い出すことの意味が君にあることを握りしめている

 

 

 

薄暗く光る部屋の

 

布団の隅にチラリと見える

 

爪の先のあの反射する一ミリ

 

ペット禁止 猫の声

 

ああ猫がないてる

 

旧友 いかがおすごしか

 

僕はもう 君の顔が思い出せない

 

 

 

 

予定

食事を済ませた

家から歩いて17分の ギフトショップに行った

ひとつ蝋燭と メッセージカードを買った

机の上に広げて

ペンを持ってみる

驚くほどなにも書くことがない

わかっていた

それをわかってはいた僕はわかっていましたよというつもりのシーリングをカードの真ん中に垂らしている

さてだれへのつもりのカードだっただろうか

僕はそのカードを蝋燭の芯の少し後ろにざっくりと差し込んだ

今日 食事を済ませて 家を出て 17分を歩いて 蝋燭とカードを買って ペンを持って ペンを置いて カードに蝋のような赤い丸を垂らして それを蝋にざっくりと差し込んで そしていまのこと

何億年も前から決まっていたの

何億年も前から そうであったの