寝てないよ涅槃だよ

おまじない

Champs-Élysées

 

 

 

透き通るような白い肌を薄く桃色にして雨が強く降るのを待っていた

傘が蝙蝠のように翻る駅前で

じぃとあなたに沿うように

赤いポストは雫に濡れていた

 

するりとした石の通り

滑る靴が緊張させた

 

静かに拡がる水の溜まり

優しく叩きつける飛沫

黒いタクシーが扉を開く音

 

遠くの景色へと目を瞑る

睫毛にかかる淡い反射光

細まった視界の隙間から

それを眺めるのが好きだった

 

街が煌く夜に

人混みに消えた

あの鮮やかなレインコートは

そのままでいてほしかった

軽い足取りで

人魚のように

するりと群衆を掻き分けて

全てを知っているかのように

まるで全てが手中のように

溌剌とした長靴の爪先に

魔法がかかっているかのように

 

 

 

 

ナイトペトラ

 

 

貴方の好きだった夜は消えました

煌々とする電飾に脅かされています

平坦を

安寧を

冷えた指先の感覚で

触れられなかった

呼吸が線を繋ぐように

爪先が波を泳ぐように

落ちた花が開くように

洗われている

顔の横で話さないでくれ

眩しくて眩眩する

どれだけ腑を抉り出したとて

そこにはもうなにもないって言ったろう

 

 

 

 

unencount

 

 

貴方の名前を知ることで

貴方を知った気になって居る

 

開かれた窓にカーテンが掛かる

 

届くようで

届かぬ歩幅

 

いっそ獣に

成ってみようか

 

覆い尽くす影と温度

 

貴方がその戸を拓く時

私はそれを知ってはいけない

 

 

虫の鳴く声

 

何処にいるのでしょう

 

 

 

エフェメラの胎動 (傘と包帯 6集 寄稿)

 

 

 

 

「こんばんは、兎です」


白い目で見てくれ 此方には彼方
遠くの水辺の過去を憶え
べたついたてのひらに波を描く

 

そう致しましたら 宜しく……

 

窓際の瓶に水を差す
石鹸水の漣
花が開くのを静かに待っている
窓際の瓶 罅 水路

 

粘膜に張り付いた余白に街を見る
消えかけた気配
振り向かない かつてそうであったように

 

ゆらり

 

鼓動が聴こえる 
宿木に灯る明かりが蠢いている

 

此処は彼方 小さな声

https://note.mu/kasatohoutai/n/n092da1f1483d