寝てないよ涅槃だよ

おまじない

feat.譫妄

 

 

広告しか入っていない郵便受に迎えられながら帰宅した

 

ただいまという声に震えた空気が死にかけの蝶みたいに揺れて過ぎる

 

電気のスイッチを付けたような気がした

 

ぼう、と小さく唸る冷蔵庫

 

じい、と鳴り続ける

何が

 

 

外壁

 

まな板の傷痕

 

蠅の卵

 

口寂しくて爪を舐める

 

 

Happy Birth Day 

 

 

 

 

 

ウルメール・ミュンスターの花瓶より

 

 

 

彼女は泣いておりました

 

母が悲しいお話をするので

 

いくつも夢をみましたが

 

幾千の星には届きませんでした

 

 

 

彼女は泣いておりました

 

雨にふやけてしまった本を暖炉に翳しながら

 

猫は振り向かず歩きます

 

ひとりで居たいのです

 

 

 

彼女は泣いておりました

 

ラブレターを書きました

 

何処か遠く美しい場所

 

知らない誰かを愛するために

 

 

 

彼女は星になりました

 

月にいる彼の愛しい花を

 

一目見るために

 

 

shiawase

 

 

揺れる蛸

 

 

歓迎されなかった固有名詞は

どこへ向かう

 

1.7メートル毎秒のぬるい風

 

隠れ場所の外階段は濡れて

待ち惚けの僕

 

引っかかって抜けた白い髪を

食んで

もどってゆく細胞

 

 

あと15分

 

冴えてしまった深夜の意識を抱えている

 

 

o beata solitudo , o sola beatitudo

 

 

戻らないと 伝えておいてほしい

 

 

 

2018 夏の終わりにて

 

 

沖にいる君を救命ボートにて迎えど珊瑚の墓標と出会う

 

冷えた朝 頭が下で足が上 先生、私は時計が読めぬ

 

壁際に張り付く小さな意識にて 昨日の晩は何をしていた

 

変わり目は少し具合が良くなくて全体的に白っぽいから

 

 

裸足とリトルアニー

 

 

外に出ると雨が少しだけ降っていた

 

シャワーを浴びてもほんのり匂う香水

 

あの時のギャルは元気にしてるかな

 

好きだった先生はもう結婚したかな

 

欠けた歯の跡を舌でなぞった

 

もうずっと全部忘れた振りをした

 

身体中におまじないをかけて

 

よく見えない目で銀色の車を追った

 

ぼろかったんだよな 

 

脆かったんだよな

 

もうずっと 忘れた振りをしてた

 

生えてくる爪が 青かったらいいのに

 

 

反射してきらきらする睫毛

 

どこかでどうか

泣かないで少女